海外旅行意識調査〜安心透析と海外旅行〜

海外旅行意識調査〜安心透析と海外旅行〜

1.調査背景

今回、株式会社H.I.S様からのご提案を受け、透析患者さんの海外旅行に対する意識調査の機会を得た。そこで「安心透析と海外旅行」というテーマで、Oasisグループに通院中の患者さんにアンケート調査を実施したので、その結果を報告致します。

2.調査目的

維持透析を実施している患者さんを対象に、

を調査することにより、旅行会社並びに医療施設が協働して、患者さんの活動エリアを広げる手助けが可能かどうかを検証する基礎データとする。

3.調査方法

以下の方法で、調査を実施した。

3−1.調査対象

Oasisグループに通院する患者さんを対象に実施した。

3−2.調査実施方法

質問紙に回答する形で実施した(添付資料参照)。
回答方法は、より多くの情報を得るため、選択肢に関しては複数回答可とし、可能な限り自由回答欄を設けた。質問紙はスタッフにより、直接手渡し回収した。

3−3.分析方法

コーディングの後、Microsoft Excelを使用し単純合計集計を行った。
自由回答に関しては、関連項目結果の項にそのまま記載した。

4.調査結果

4−1.回答者プロファイル

・調査期間:2016年6月28日〜7月5日
・調査対象者:102名(Oasisグループ(2施設)に通院中の全患者)
(T施設:79名、S施設:23名)
・回答者数(率):53名(52.0%)
(T施設:30名(38.0%)、S施設:23名(100%))

4−2.分析結果

以下に、各調査項目ごとに結果を示す。
※結果の表示順は、質問番号順不同で、見やすさを重視しましたこと了承下さい。

質問1:「海外旅行へ行きたいが、現地での透析治療が理由で諦めたことはありますか。」

質問1
  • 有効回答数:52名(無効票1名)
  • 「いいえ」回答に含まれたサブ回答
    • 考えたことがない・・・16名
    • 既に経験済み・・・・・・5名
  • 「はい」+「考えたことがない」=41名(78.8%)

【結果】

海外旅行を諦めたり検討したことがない患者さんは、全体の78.8%であった。

質問2:「訪れてみたい国はどこですか。(複数回答可)」

【自由回答】

  • その他のアジア圏の国:
    香港、上海、カンボジア、インド、モンゴル、 フィリピン、エジプト
  • その他の国、エリア
    スウェーデン、バリ島、メキシコ、スイス(3)、 モロッコ、ペルー、ベルギー、タヒチ、キューバ、 ニューヨーク、ロサンゼルス

【結果】

  • 多くの患者さんが「ハワイ」を選択していた。
  • 海外旅行経験者の多くは、仕事での渡航が多く、 特定のエリアへの訪問と複数国に訪問の2パターンが見られた。

質問3:「海外旅行で、何をしたいですか。」

【自由回答(6)】

  • ハワイに1ヶ月行きたい
  • 自宅でゆっくり
  • 仕事、出張(3)
  • スポーツ観戦

【結果】

質問項目は一般的な内容に限定し、自由回答欄を設けて患者さん特有の意見を求めたが、特別な回答は見られなかった。

質問4:「誰と一緒に行きたいですか。」

【自由回答(1)】

  • クリニックのスタッフとツアーでお組めば参加しやすい

【結果】

半数近くの方が、ご夫婦もしくはパートナーとお二人でのご旅行を希望されていた。

質問5:「何日間の旅行がしたいですか。」

・複数回答可・・・65票

【結果】

半数以上の方が、一週間程度という比較的長期間の旅行を望まれている結果であった。

質問6:「海外での透析治療(施設)に望まれることはなんですか。(重複回答可)」

◆透析治療に関わること

【結果】

・75%以上の方が「現在と同等の質」を、70%以上の方が「清潔」を求める結果であった。

◆サービスに関わること

【結果】

質問7:「ご希望の海外旅行の形態についてご希望を教えて下さい。」

・複数回答可・・・93票

【結果】

質問8:「透析治療を海外旅行先で実施する時のご不安・心配毎があればご記入下さい。」

【データ】

チェック項目:
◆透析費用(現地での窓口負担額)・・・41票

自由回答欄:16名
◆透析治療の質(7票)

◆費用面(5票)

◆言葉の問題(2票)

◆その他(5票)

【結果】

5.考察

5−1.患者さんのニーズ

1−1:旅行の目的や一緒に行きたい方のニーズに特別感はなし

「旅行で何がしたいか」「誰と一緒に行きたいか」の質問に対しては、美味しい食事やゆったりとした時間を過ごす、名所史跡巡りなどの意見が大多数を占め、透析患者さんに特別と思われる記述はなかった。また一緒に行きたい方は、ご夫婦やパートナーとの2人が多く、気を使わずご旅行したいという思いを察することが出来る。
これらから、透析患者さんであっても、海外旅行旅行に対する思いは一般の方と変わらず、「大切なパートナーの方と、地元の史跡巡りをしながら美味しいもの食べ、ゆっくりしたい」という思いが見える結果であった。
また、「地元の美味しいものを食べたい」という透析患者さんの思いを叶えて差し上げるためには、自己管理の徹底と日頃の透析治療における管理を達成する必要があると思われる。

1−2:ニーズは長め?! 1週間程度のご旅行を希望

当初、透析治療に影響が少ない短期間のご旅行を望まれていると予想していたが、実際には「1周間程度」という日本人としては比較的長期間のご旅行を望まれていることが分かった。
これは、実際に透析を受けながらも海外旅行にチャレンジしたいという思いというより、「もし透析を考えなくて済むのなら。。。」という前提のもとでのご希望なのかもしれない。

1−3:海外での透析治療に対するニーズは「質の高さ」と「日本語による意思疎通」

海外での透析に対して望まれることは、圧倒的に「現在と同じレベルでの透析の質」と「清潔な施設」であった。
これは、海外の透析事情が分からない事が多いために生じる情報格差と思われる。加えて、実際に日本と同等レベルの透析治療が行われているかどうかの検証が必要であろう。
また、半数以上の方が「施設内での日本語対応」をご希望されている。体調を的確に伝え、適切に理解・対処してもらうことは透析患者さんにとり生命線でもあるため、言葉に対する安心がニーズとして現れたものと考えられる。

1−4:旅行計画は、ツアー会社にお任せしたい

個人で全て予約するより、圧倒的にツアー会社を通して予約したいというニーズが多かった。
また、「いざという時に現地で頼れる人がいる」ことを希望する方も多く、これは前項の「日本語対応」に付随するニーズと思われる。しかし、その一方で知らない方と一緒のツアーを希望しなかったり、全行程随行の添乗員を希望しないなどの傾向もみられ、『困った時は助けて欲しいけど、それ以外は自由にさせて欲しい』というニーズが見え隠れする結果となった。

1−5:不安は「透析の質」と「費用」

海外旅行先で透析治療を行う際の不安は、「透析の質」と「費用」が大きいという結果となった。費用に関しては、チェック項目があるにもかかわらず自由回答にも具体的な不安の内容が記載されていた。旅行費用に加え、一時的にであれ透析費用負担が発生するとなると、切実な問題である。

5−2.質問用紙の構成:

今回の結果を受け、質問用紙の構成(内容)に関する以下の課題があった。

2−1:旅行に興味のない方への配慮

回収時の患者さんから、「このアンケートは旅行に行きたい人目線の内容(興味のない人への配慮がない)」とのご指摘を頂いた。
一般の方々の中にも海外旅行にご興味のない方がいるように、透析患者さんとえども海外旅行にご興味のない方への対応・アプローチが必要であった。

2−2:「海外旅行を諦める」+「考えたことがない」が75%超

海外旅行を
1)諦めた方:46.1%
2)考えたことがない方:30.8%
であったが、「考えたことがない」理由が、透析治療があるからなのか、元々(海外)旅行に興味が無いのかを明確にすることが出来なかった。
しかし一方で、質問2の「訪れてみない国はどこですか」への質問に対して、無回答者が2名ということから、海外旅行への何らかの思いはお持ちとの推測も出来る。

5−3.調査対象者の偏り:

3−1:調査対象者の年齢若く、有職率が高い

今回、調査対象となった透析患者さんの平均年齢は50代半ばであり、全透析患者さんの平均年齢を10歳以上も下回っている。また、患者さんには高い自立を求めているため、送迎も行っておらず有職率は80%を超えている。
このことから、一般の透析患者さんよりも活動的である事が予想されるため、一般的な透析患者さんの意識調査のためには、新たに調査対象を設定する必要があると思われる。
また、他のハンディキャップが有る方との意識の比較は不明である。

3−2:経験者は何度も!

今回の調査を通して、一部の患者さんではあったが何度も海外旅行の経験を持たれている方がいた。その背景のほとんどは仕事での渡航である。
同じ国へ何度も行かれる方もいれば、様々な国を訪ねられている方もいる。
今後の意識調査では、海外旅行経験者(ベテラン)〜未経験(消極的)のいくつかの群に分けて調査を実施すると、データの精度が高まると考えられる。

6.まとめ

今回の調査から、以下の事が分かった。

1.80%近くの患者さんが、海外旅行を諦めたり、そもそも検討したことがない。

2.患者さんの訪れたい国のNo.1はハワイであった。

3.半数以上の患者さんが、1週間程度の旅行期間を望まれている。
(1泊2日や日帰り旅行は小数派であった。)

4.一緒に行きたいのは、ご夫婦・パートナーが約半数と最も多く、次いでお友達、ご家族 (複数)であった。

5.海外旅行でのしたいことは、透析患者さん特有のご希望は見当たらなかった。(地元の美味しいものを食べたいや、名所・史跡を巡りたいなど)

強いて言えば「ゆったりと過ごしたい」というご希望が2番めに多かったのは、日々の仕事に加え週に3回×4時間の透析という生活に余裕を感じることが少ないからかもしれない。

6.透析患者さんが海外旅行時に望むことは、大きく2つに分けることが出来る。

・透析治療に関わること

「透析の品質」「清潔な施設」が両者合わせて、全票数の69%を占めた。
特に、水質の安全性を心配される方が多かった。

・サービスに関わること

「日本語が話せるスタッフの常駐」を望む患者さんが、約38%で最も多かった。
体調が悪くなった時の適切な対応やいざという時に頼れる人がいるなど、人に対する信頼を望む傾向も高かった。

7.旅行の予約は、圧倒的にツアー会社を通して予約が多く、全票の40%を超えた。また、医療施設の予約代行をご希望される方多かった。

海外旅行を考えているか否かを問わず、患者さんは、日本と同等水準の安全な透析を強く望んでおり、不測の事態に備えて日本語での意思疎通が取れることを重視している。
また、ホテルや航空券のみならず医療施設の予約代行もどこかに担って欲しいとの意向がある。

今回の調査で分かったことは、全ての予約と現地対応をしてくれる体制に加え、安心・安全な透析治療が受けられるのであれば、透析患者さんは少なからずとも海外旅行に行ってみたいと思っている。
ということである。

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